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「連続講座 第3回」〜アカペラコーラスのパートについて〜ボイパのコツ

ゴスペルとアカペラコーラス

 私たちが普段「ゴスペル」と呼んでいる歌ですが、正しくは「ゴスペル・ソング」という風に言います。
 最近では日本でもゴスペルを歌うことがとても盛んになってきています。アカペラでハモルっていうこと=ゴスペル・ソングを歌うこと、という単純な図式ではないのですが、今盛んなアカペラブームは、明らかに、ゴスペル・ソングを歌うことが盛んなことと切り離しては考えられない現象なんです。
 お腹のそこから声を出して、周りの人達と調和をとって、その中での自分自身の役割をきちんと体感できるという快感は、どちらの音楽にも共通したものですよね。

アカペラ合唱をつくるのにどんなパートが必要?

 どんなパートが必要かは、どんな編成にアレンジをするのかに関わってくるのですが、基本的に、ヒトの声の音域でパートが決まっていますので、覚えて下さい。

女声:高い順に、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、アルト
男声:高い順に、テノール、バリトン、バス
という順番になっています。大体の各パートの音域ですが、ここではソプラノ、アルト、テノール、バスを例にとりますが、図1のようになります。
図1
図1

 メゾ・ソプラノとバリトンは、それぞれのパートの中間的な音程が出せる声、ということになりますね。ただ、アカペラコーラスでは、バスなんかでここに書いてある音程よりも低い音が出てきます。マイクの力を借りたりすると、この音域よりも低い音が使えたりします。生演奏だときつい事が多いですけどね。

 なのでここに挙げる各パートの音域は、あくまで目安として考えて下さい。声の音域っていうのはあくまで個人差ですので。

パート分けはなんのため?

 やっぱり、音楽にはメロディが必要ですよね。でも、ハモルためにはメロディだけじゃ出来ません。メロディだけではなく、それを支える他の音達が必要になってきます。

 A.メロディとハモルための、和音です。和音っていうのは、いくつかの異なった高さの音が同時に鳴った状態の事です。
 ハーモニーっていう言葉がありますね。ハモル、っていう言葉は、正確に言うと「異なった高さの音を同時に鳴らして綺麗に響かせる」という意味です。もちろん、どうやったらカッコイイアカペラが作れるのか、っていう時に、ハーモニーの知識は大前提になってきます。
 次回以降、和音も含めた音楽の基礎的な理論からみっちり書いていきたいと思います。

 B.リズムを作る音達です。バンドなどでは、パーカッションやドラムがリズムを刻むことで、音楽全体を活き活きとさせたり、テンポ感をハッキリさせたりします。

 ところが、アカペラコーラスでは、これを、声でやらなくちゃいけません。それをボイスパーカッションって言います。言葉通り、声で打楽器を真似してリズムセクションを歌うことです。ただし、独自にボイスパーカッション専用のパートを作る場合と、ベースがボイスパーカッションと融合して、「低音+リズム」を一手に引き受ける場合とがあります。

 パート分けについてですが、「和音」を作るときに、もちろん、高い声の人は高い音域を、低い人は低い音域を歌う方が、より良い声が出ます。なので、通常、バス〜テノール〜アルト〜ソプラノ、と低い方から順に音を積んでいくと自然な和音にすることが出来ます。

 自分たちの一番無理のない音域で、各パートが重なると、一番自然な響きになります。

 例えば、一つのパートだけ、ちょっと高い声を無理に出していると、そのパートだけ聞こえなくなっちゃったり、逆に、そのパートの張りつめた緊張感だけが強調されちゃったりすることになります。

 なので、アカペラバンドを組む時にも、自分の声がどの音域にちょうど良いのかを知っておく必要は大ですね。アレンジするときにも、「ちょっとテノールを聴かせたいな」という場所で、テノールにとっては低い音域を書いてしまうと、いい声を出せませんよね。各パートの役割を明確に振り分けることが大切なんです。

 

ボイスパーカッション

 アカペラでハモルには、メロディ以外の音が必要だということは分かって頂けたでしょうか。今回はボイスパーカッションについて触れます。具体的なアレンジ法は、理論を話し終わったころ、実際のアレンジと平行して触れます。今回は、ボイスパーカッション(ボイパと略して呼ばれています)の基本的な歌い方を説明します

 

 

 

 

 

1.ドラム譜をみてみよう!・・・

バスドラム クラッシュ・シンバル スネア・ドラム

(上のボタンをクリックすると楽器がかわります)

 まず、いろいろなドラムを見てみましょう(下の図)。
ドラムセット

 つぎに、どの太鼓やシンバルがどんな風に鳴っているのか、ドラムの楽譜を見てみましょう(図3)。
図3
図3

 良くみてみると、ハイハットと、スネアドラムが同時に鳴ったりしています。ごく一般的なドラム奏者は、両手両足を駆使します。

 なので、当然同時に複数の太鼓やシンバルを鳴らすことが出来ます。
 でも、これを、ボイスパーカッションでやる場合、一人で複数の音を同時に出せる人っていませんから(俺はできるぞ〜、っていうひと、いますか?)
 一人で出来るように書き直すことが必要になります。図3のドラム譜を、ボイスパーカッションで歌えるように直すと、図4のようになります。
図4
図4

2.リズムパターン・・・

図5
図5

 図5のように、バスドラム、スネア、ハイハット、クラッシュシンバル、というように記譜されています。

 もう一つ気づくのが、基本的なパターンを繰り返していることです。ドラムは、通常、あるパターンを作って、それを反復します。

 ですから、ドラムパートをつくる、ということは、どういうリズムを「1小節分」つくるか、なんです。この1小節分のパターンが反復される訳ですから、たかが1小節とあなどれません。このリズムパターンが、曲の基本的な印象を決定づけるって言っても大げさではないです。

 ポップスのリミックスだって、リズムセクションを変えるだけで、本当にこれは別の曲なんじゃないかしらん??というくらい別々の曲に聞こえちゃったりしますよね。アカペラコーラスをアレンジするには、ボイスパーカッションパートをどんなリズムで行くか、っていうことが、かなり大切な事だ、って分かってもらえましたか?

 どういうリズムがいいのか、っていうことは、色んなCDのドラムパートをよ〜く聴いて、たくさんのリズムパターンを想像してみることから始めましょう。

3.じゃあ具体的に・・・

 どうしたら、ドラムをボイスで出来るか、っていうことに入りたいと思います。

(1)呼吸法・・・腹式呼吸で!
【ア】
まず、お腹を膨らませて、たっぷり肺に息を吸い込みます。この時に力が入りすぎて肩まで持ち上がったりしないように。
【イ】
次に、バスドラムだったら、「ドゥッッ」と言うので、舌を上の歯の裏側にくっつけて、そこで、お腹をへっこませて空気を当てておきます。お腹にためた空気を、唇や舌でダムのようにせき止めておく。
これが、ボイスパーカッションの基本形です。この状態から、バスドラム、スネアドラム、ハイハットシンバルによって、唇や舌など、「空気の止め口」の形を変えるんです。
【ウ】
なので、リズム毎に、お腹の筋肉は活発に動きます。お腹のたるみ改善にも期待できるかもしれないですね。
【エ】
パーカッションは、「声を出す」というよりも、お腹にためた空気を唇や舌を使って瞬間的に「風圧」として出す、というイメージで練習しましょう。
【オ】
マイクを使用する場合、ボイスパーカッションパートは、特にバスドラムなどの低音は、マイクヘッドを手で覆って空気を瞬間的に吹きかけるだけでも、「ボッッ」という音がしますので、マイクを使ったほうがより表現の幅は広がります。

(2)バスドラム----------ドゥ、バッ
・低い音のイメージで瞬間的な音圧。ドゥッにしてもバッにしても、母音をハッキリ発音しないで、とにかく、風圧勝負!、という気合いで。
・マイクを使う場合は、マイクにボッッっと息を吹きかけて風圧をあてる。

(3)スネアドラム--------プッ、トゥッ
中音域で瞬間的な音。

(4)ハイハットシンバル----ツッ
高い音のイメージで短く

(5)クラッシュシンバル---- ツ−
高い音で、しかも余韻たっぷりのイメージで

(6)トム(通常米語流にタムと呼ばれることが一般的)---トゥン
スネアよりもやや余韻が多い感じで。
トムには、低音、中音、高音の3つの音程がセットになっていますので、それぞれ、トゥンで結構ですから、3種類の音高で言える様にしましょう。

 ただし、これらの音色も、あくまで「目安」みたいなものです。
ドラムに似ている音色をカタカナとかローマ字で書けませんよね。なので、いろいろ研究してみて、気に入った音色なんかを見つけてみて下さい。とにかく、キーワードは、「風圧!」です。

4.ビートについて・・・

 カッコ良いノリのポップスは、4拍子の場合、2拍目と4拍目にアクセントが来ます。

 よく、外人のアーティストのライブなんかに行くと、!2!4って、1拍目と3拍目に一生懸命手拍子をしながらノリノリになっているお客さんを見かけますけど、悲しいんですが、これじゃあ、演歌とか純日本的な拍子になっちゃうんです。

 ポップスでは、1!3!が正しいアクセントです。それに気を付けて基本的なビートを作ってみましょう。

A.4ビート(図6)・・・4分音符がビートの基本になる。ややゆったり感あり。
図6
図6

B.8ビート(図7)・・・8分音符が基本のビートになる。
図7
図7

C.16ビート(図8)・・16分音符が細かく刻んでいるので、アップテンポな感じ。
図8
図8

 もちろん、実際のドラムパートは、基本が4ビートとか8ビートであっても、ドラマーのセンスで所々に16分音符の刻みをいれたり、複合的なリズムを使ったりします。
 ボイスパーカッションについての基本でした。

 次回からはいよいよハーモニーを作るための理論に入っていきたいと思います。後半に入ったら、具体的にボイスパーカッションも含めて、実際にアレンジをしていく予定ですので、そちらもお楽しみにして下さい!

柴山拓郎さんの著書「アカペラ マル秘アレンジ」(絶版)

柴山拓郎のハモリ講座書名:かんたんすぎる!?アカペラマル秘アレンジ(CD付)
(人より“うまい”アカペラを目指す実践法)

編著者: 柴山拓郎

発行:シンコーミュージック

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著者プロフィール

柴山拓郎 柴山 拓郎(作曲)
 1971年東京生まれ。ポピュラー音楽からテクノロジー音楽まで 幅広いジャンルの音楽を越境する現代音楽作曲家。2000年から『@ELISE』にてJ-POPのピアノ編曲なども数多くこなし、同ページではハモリ講座を執筆、アカペラのアレンジ法に関する音楽理論をわかりやすく解説する。

 97年東京音楽大学大学院修士課程修了。作曲を西村朗、池辺晋一郎、湯浅譲二、遠藤雅夫の各氏に師事。93年第62回日本音楽コンクールに、94年秋吉台国際作曲賞にそれぞれ入選。また、秋吉台作曲セミナーで、C・チェルノウィン、G・シュテープラー、K・シムの各氏に作曲を師事する。96年より 、作曲家団体「深新会」に所属し定期的に新作を発表。98年には、古楽器奏者と作曲家から成るグループ「アルコバレーノ」の結成に参加、以降毎年古楽器奏者と共に演奏会を企画、古楽器のための作品を作曲する。また、同年より、日本を代表する打楽器アンサンブル、パーカッショングループ72のメンバーとして、作編曲や 楽曲解説の執筆の他、J.ケージ、E.ヴァレーズ等の演奏にも携わる。2000年、オルガンのための「Monologue」が、松居直美氏によりオランダ各地で演奏された他、同年秋には、アムステルダム旧教会にて同氏によりCD収録された。邦楽器への取り組みも多く、二十絃箏のための「monody(1999)」をはじめとし、これまでに日本音楽集団、松村エリナ氏、真鍋尚之氏等からの委嘱を受ける。

 2001年5月にリリースされたトランペット奏者 曽我部清典氏のアルバム「トキノコダマ」に独自の視点で編曲したビートルズの「with a little help from my friend」が収録されている他、ピアニスト門光子氏のCD「風の記憶」に、「哀歌(monody)」が、武満徹、藤枝守、三木稔、西村朗、吉松隆ら日本を代表する作曲家の作品と共に収録されている。2002年春 M-A Recordingからリリース、同年レコード芸術準特選版に選定された。同氏の次作アルバム「東方逍遙」では、アジアのポピュラーソングを透明感のあるサウンドで編曲する他、新作が収録され、2003年レコード芸術準推薦版に選定された。

 美術や空間におけるサウンドデザインの活動も活発に行い、2005年 NPO法人 芸術資源開発機構とのコラボレーションで、埼玉県立近代美術館のためのサウンドインスタレーションをコンピュータプログラミングにより制作する。美術作家井上尚子氏とのコラボレーションは10年に及び、ICC、スパイラル、Bankart等における同氏作品への音響デザインを多数提供する。2006年からは同氏とのユニット「Air Plug」として活動を改めて開始し、福島現代美術ビエンナーレに作品を出展。

 2002年から東京電機大学 理工学部 情報システムデザイン学系アミューズメントデザインコース助手として「作曲・音楽文化研究室」を主宰。電子音響音楽等テクノロジーが関わった新しい音楽の表現研究や制作指導を、技術指導にとどまることなく「テクノロジー・アート・情報・社会」等の多眼的視点から捉えた授業やゼミを展開、後進の指導にあたっている。

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